偏愛シチュエーション

18推CD、同人音声の感想ブログです。内容にふれているため自衛お願いします。

御伽草子 少女散歌(CV:三橋渡、aki)

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同人サークルDream Stage発、昭和初期山陰地方で起こった少女失踪事件の謎を解明すべくやって来た新聞記者のヒロインと着物絵師の青年を巡る耽美ミステリー。


昭和初期の太平洋戦争が起こる数年前に、山陰地方で津山三十人殺しという凄惨な殺人事件(実際にあった事件)が起きた頃。同じ時期に、近くの村で少女が連続して失踪する事件が起きていました。発生から三年経過するも消えた少女たちは見つからず、遺体が発見されることもありませんでした。少女たちの親族が捜索届けを出していないため事件扱いされてないとか、なんとも奇妙。失踪事件に疑問を持った東京に住む新聞記者のヒロインは、容疑者の近衛愁(このえ・しゅう)という青年に取材を申し込むことに。彼は名家に下宿している着物絵師で、取材依頼を受け少女たちとのやり取りを語ります。

 

三年前のある日、愁が通りすがりの少女に声を掛けると、家出してきて旅費が尽きたとのこと。愁は着物のモデルになってくれる女性を探しており、報酬を払うからモデルにならないかと誘います。少女は週二回屋敷でモデルをし、公民館で寝泊まりする生活を送り、二週間ほどたった頃姿を消したそう。その後しばらくして弟子入り志願の少女が尋ねてきて弟子にするも、彼女も数ヶ月で行方不明になったとのこと。警察に捜査を頼んでも彼女たちは見つからず、手掛かりもなく。

 

愁は最後のモデルになった少女の話をします。少女は足を怪我していて愁は手当てを申し出、車で彼女を下宿先に連れて行くことに。彼女は最近起きた津山三十人殺しの研究を友達としていると話します。探索しているうちに友達とはぐれ、途方に暮れていたところを愁に声を掛けられたのでした。今日は遅いから屋敷に泊まるよう愁は勧めます。お礼がしたいと少女が言うと、愁は絵のモデルを依頼。少女が着物を羽織った姿はあまりにも美しく、愁は一瞬で心惹かれ自分だけのモデルにしたいと思います。採寸の折、少女にキスをし服を脱がせ、彼女の体の美しさに女神だと賞賛する愁。さらに肌に触れても少女は抵抗することなく、行為がエスカレートしていくことに。少女を自分だけのモデルにするべく、愁は彼女を抱きます。

 

愁は少女を抱きながら、着物絵師になったいきさつを話します。日本画家になるべく師匠に弟子入りし、奮闘する日々を送っていた愁。ある日、師匠は病気で余命わずかと話を聞かされることに。後継者になり、妻の面倒を見て欲しいと頼まれます。師匠は男性の機能がなく、代わりに妻を抱くよう愁に頼んだのでした。師の目の前で妻を抱く姿を見せたとか、退廃的かつ屈折した官能が語られます。愁は奥様を抱くかたわら、人肌に絵を描いてそれを生地で写し取る技法を思いついたとのこと。絵付けとエロスで作られた着物は話題を呼び、売れっ子作家になるものの、多忙のあまり心を病んでしまったそう。愁が山陰地方に移住したのは静養目的で、静養しつつ着物絵師をしているのでした。少女と官能と芸術の日々を送るも、着物が完成を迎える前に彼女は姿を消してしまった、と愁は話を終えます。

 

取材のための話はひと段落着き、帰る時間に。愁はヒロインを公民館まで送るため、巡査部長の安藤佐次郎(あんどう・さじろう)を呼びます。自転車で安藤に運んでもらいつつ、話を聞くことに。愁のモデルになった少女は8人いて、みんな行方不明だと安藤は話します。きっと家出だろう、地方ではよくあること、というのが安藤の考え。屋敷の離れには座敷牢があり一時愁が疑われたが、使った形跡がないため容疑は晴れたとのこと。

 

次の日も屋敷を訪れるヒロイン。愁はヒロインの手や腕にキス、モデルになって欲しいと頼みます。ヒロインを見ていると、インスピレーションが湧いてくると。ヒロインは依頼を引き受けることに。取材のためなのか、昨日の官能的なやり取りの話を聞いたせいなのか。媚薬を勧められそれを飲み、裸に絵付けされながら愁に抱かれることに。

 

女性を愛撫しつつ肌に絵を描き、それを着物の生地で写し取る着物絵師と設定がまず強い。芸術家の古風な言葉遣いや女性への執着、少女の失踪を巡るミステリーと、ムードたっぷりの作品でした。少女とのやり取りや情事、着物絵師になるまでの師匠の奥様との行為など、近衛愁という青年自身がエロスのかたまりのような。女性への賛辞の言葉と美意識が独特で、しゃべりも優しく穏やかなようで冷たかったり淡々としていたり、感情の底が見えません。

 

物語は二転三転し、最後に思いもよらぬ真実を聞くことに。ミステリーとサスペンス、エロスが入り混じる内容で非常に情報量が多いですが、テンポ良く順を追って進行するため混乱せずに聞けました。BGMありでトラックの序盤と最後に効果的に流れ、切り替えがしやすく不穏な曲調で雰囲気しっかり。アドベンチャーゲームサウンドノベルのゲームをプレイしているかのようで、没入感がすごかったです。

 

少女たちの行方や近衛愁というキャラクター、これらは時代背景が関わっており最後の最後にそうか!となりました。18禁音声のジャンルの枠を超える内容で、全編聞きどころのすごさ。サークルさんいわく続編を計画しているとのことですが、今作ラストありきの続編と思うので、予告が来る前にネタバレに触れずに聞いて欲しいです。