偏愛シチュエーション

18推CD、同人音声の感想ブログです。内容にふれているため自衛お願いします。

花の嫁入り-櫻酒奇譚 妖樹録-(CV:桜川春仁)

花の嫁入り -櫻酒奇譚 妖樹録- / 桜川春仁

アイリスクォーツ発、引っ越し先の土地で迷子になったヒロインが桜の精に出会う作品。キャストは桜川春仁さんでタイトルにも櫻が入っていて、無邪気な少年のような桜の精を演じておられます。

 

引っ越した街の緑地を散策していたヒロイン、いつしか迷子になり困っているところ、不思議な少年に声を掛けられます。彼は桜樹と名乗り、着物姿で御子をやっているとのこと。なんとも浮世離れした印象の少年ですが、ここでしか飲めないお酒をご馳走する、友達になってとヒロインを熱心に誘います。桜樹に案内され時不知(ときしらず)の桜を見ることに。桜の季節は過ぎているはずなのに、満開に咲き誇る桜が目の前にあったのです。桜樹にお酒を勧められ、それを口にするヒロイン。何十年も漬けたお酒がある、人間のお酒はと言ったり、見た目は少年なのになんだか違和感が。桜樹に年齢を尋ねると、800歳を超えていると言います。時不知の桜と桜樹は同時に誕生し、彼は桜の一部で桜の精と呼ばれたとのこと。桜樹が人ではないと知ったヒロインは驚きつつ、怖くないと受け入れる態度。たくさん友達を作って家族と暮らしたいけど、と桜樹は話しヒロインから仕事やお金のことを聞かされ驚きます。人との交流は今までもあったようですが、基本的にひとりぼっちのようでヒロインの話に興味津々。こんなに優しい人に会ったのははじめて、と桜樹はヒロインにキス、短い時間ながら彼女のことを好きになってしまったよう。桜酒を飲んだ君と僕はもう繋がってる、と言われ桜樹に抱かれることに。

 

翌朝、目を覚ましたヒロインに今日は何すると桜樹は尋ねます。仕事に行かなきゃとヒロインが訴えると君は一人で帰らなければならない、ここでの記憶は忘れると寂しそう。ヒロインは家に帰ると決意し、桜樹と別れることに。数時間後、元来た道を見つけることが出来ず、時不知の桜のところに戻ってきたヒロイン。桜樹は彼女を出迎え、桜酒を飲んだ人は大体帰れないと語ります。桜の妖気に魅了され、帰れなくなると。君とひとつになれるのは嬉しいはずなのに胸が苦しいと言う桜樹、なんだか不穏な気配。君も桜の一部になる、幹の内側に埋め込まれて養分になるという恐ろしい言葉が。人間だって他の生き物を食べているのに何が悪いの、と人間とは感覚が違う。桜が生きるためには、食糧としての人間が必要だと。君だけはそうしたくなかった、と乗り気ではない様子。空腹の桜がヒロインを取り込もうとし、必死になってそれを止める桜樹。仕方ないことと割り切っていたはずが、本心では仲良くなった人を取り込みたくない気持ちがあるよう。桜と格闘した桜樹はなんとかヒロインを取り戻し、こんな状況でも助けたことに礼を言う彼女にたまらなくなり叫びます。超越した存在でありながら、同時に孤独でもある内心をヒロインに語る桜樹。彼の自分に対する気持ちが何なのか、ヒロインは言い聞かせます。

 

シリーズ6作目、今回は桜の精が相手とまさに花の嫁入りでした。今までいくつもの結末を聞きましたが、今回はまた異なる内容。現代女性がヒロインである場合、わりと猶予が与えられるというか、人として生きた後嫁ぐことが多かったのに対し今回は違いました。ただ桜樹とヒロインが結ばれればハッピー、というわけではなく。人を養分とする桜を止めなければならず、土地に縛られ誰とも一緒にいられない桜樹を救うための結末かと。ビターエンドかと思いきや、ヒロインが桜樹と結ばれたことで奇跡が。永遠であるかのような循環を得て、悠久の時を生きるラストが美しかったです。愛こそ全てというエンディングは他の巻とも共通していて、温かい気持ちになりました。