偏愛シチュエーション

18推CD、同人音声の感想ブログです。内容にふれているため自衛お願いします。

ブラン・カッツェ~Le Petit Chaperon Rouge前編(CV:茶介)

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同人サークルアラベスク発、2018年に発売された「ブラン・カッツェ~枯れた白~jeu de poupee」の本筋にあたる超大作DL音声。「枯れた白」が収録時間6時間だったのに対して、こちらは11時間超え。一作目を大きく上回るボリュームで、さらに中編、後編に続くというのが恐ろしいです。「枯れた白」では軍人のキリシマと、御使いという特殊な力を持つ令嬢のヒロインは婚約中でしたが、こちらでは二人の出会いから聞くことに。

 

父の昇進パーティーの夜、ヒロインは父の部下である軍人キリシマに出会います。ヒロインは初対面の彼の病を、御使いの力を使い治癒することに。キリシマはヒロインに名刺を渡し、たったそれだけの出会いが彼女に強いインパクトを与えたのでした。四年後、キリシマが任務についていた海外支援が終わり、日本に帰国したところから物語は動き始めることに。

 

ヒロインは陸軍上級大将であるクジョウを父に持ち、御使いの力を持っていることは世間には伏せ、大きなお屋敷で生活するお嬢様。複数のメイドや執事を従えるも外出は許されておらず、自由はありませんでした。理由は彼女が持つ御使いの力のせいで、治癒や浄化の他に相手の精神に干渉する能力。その力で、母親を自殺に追い込んだ過去があったのです。久しぶりに再会した父に、ヒロインはキリシマに会いたいと頼み込みます。キリシマのためにクッキーを焼いたりと、いつになくはりきっている様子のヒロイン。四年ぶりにキリシマと再会、兄のカガリも同席してお茶を飲むことに。キリシマは海外支援の際、世界各地で撮った写真をヒロインに見せ、楽しい時間を過ごします。キリシマが屋敷を後にすると、ヒロインに何故キリシマを呼んだのかとカガリに問い詰められます。兄はヒロインが外部の人間と接することを嫌っていて、同時に彼女の御使いの力も忌み嫌っていました。それはメイドたちも同様で、恵まれているようでヒロインは周囲の人間に差別されている様子。家族や仕えている者たちには距離を置かれ、外出も出来ないヒロインは孤立状態。上官の娘というのもあるにせよ、礼儀正しく親切に接するキリシマにヒロインが心惹かれるのは無理もないことでした。

 

後日ヒロインは執事に命じてキリシマとの密会を実現させますが、そのことを知ったカガリは激怒します。今まで以上に外出が制限され、部屋のドアにカギを掛けられ軟禁状態に。不自由な生活を送るヒロインの元に、執事の手引きによりキリシマが姿を現します。この前のお礼にとヒロインを外に連れ出すキリシマ、二人で海を眺め、キリシマの隠れ家に行くことに。そこでキリシマに御使いの力があってもあなたがここにいて良かった、と熱心な告白を聞かされます。二人は口づけを交わし、ヒロインははじめてを彼に捧げ甘い夜を過ごします。

 

ヒロインとキリシマの出会いに始まり、障害を乗り越え婚約にこぎ着ける流れが丁寧に描かれています。一時間半を超える濡れ場が何度もあり、キリシマがヒロインに快楽を教え、身も心も溺れさせる過程が聞けました。アニメ2クール分ほどの長尺のこの作品、濡れ場のみならず非常に多くの物語や情報が盛り込まれています。ヒロインとキリシマ両方の子ども時代のエピソードが描かれ、彼らの人となりを想像するヒントを聞くことに。

 

作品内の日本は戦後複数の国に植民地にされ、解放後も移民問題で不安定な状態。キリシマが軍のトップを目指すのには理由がありました。キリシマは子どもの頃移民に父親を殺され、過労で母も亡くすという不幸な生い立ちの少年でした。今の日本を支配しているのは軍で、軍も一枚岩ではなく穏健派と急進派に分かれている模様。軍の上部を占める穏健派に成り代わり、改革を目指す者達で日本を作り変える、移民を排除するのが急進派の目的。目的達成のため手段を選ばず、人の弱みを握りそれに付け込み脅すという、表には出てこないキリシマの裏の顔を聞くことに。

 

「枯れた白」では何か企んでるけど根はいい人そうに思えたキリシマ、今作を聞くと内面の黒さが出ていて印象が変わりました。白い紙に墨を垂らすとしみが広がるように、純白だったヒロインにもある変化が訪れます。優れているようでいびつで欠けていて、どこか似ている男女は運命共同体となり、修羅の道を歩むことになるであろうラストに戦慄しました。

 

キャスト多数参加のこのシリーズ、シチュエーション音声であると同時にボイスドラマでもあり、利害関係入り乱れる人間ドラマが聞けます。ヒロインに異常な執着心を見せる兄のカガリ、政治家で裏でキリシマと繋がる鉄の女である姉のミカゲとキャラクターも濃いです。恋愛ドラマであると同時に壮大な大河ドラマでもあり、転機を迎えた先に何があるのか興味が尽きません。