偏愛シチュエーション

18推CD、同人音声の感想ブログです。内容にふれているため自衛お願いします。

home sweet home(CV:黒井勇)

home sweet home

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HOBiGIRLS neige発の単発もので、舞台はおそらく昔のアメリカ西海岸。脚本は堀川ごぼこさんで、声は黒井勇さん。公式の情報は、若い夫婦が貧しくも幸せに生活しているというあらすじのみ。甘々系かと思いきやかなりしんどいという感想を見て、興味が沸き購入しました。 

 

とある街の片隅で、貧しいながらささやかで幸せな生活を送る二人の男女。黒井さん演じるレイモンド・ウッズと、二歳年下のヒロインが暮らしていました。仲の良い夫婦で、朝から甘い空気が漂っています。レイモンドとヒロインは二年前、この街にやって来たとのこと。レイモンドはダイナーの調理人の仕事を、ヒロインはパラリーガル(弁護士業務の補助をする職業)を目指していて勉強中。話を聞くと、レイモンドはヒロインが外へ働きに行くのをあまり良く思っていない様子。二人の出会いは子どもの頃で、はじめて出会った時レイモンドはヒロインを天使と思ったと言います。夜、勉強中のヒロインに我慢出来ないとキスするレイモンド。キスやいちゃいちゃをおまじない、と呼ぶ彼に抱かれることに。事後外出したいと言うヒロイン、明日二人で少し離れたところにある公園に行く約束をします。

 

 

朝から出掛ける二人、アパートから出ると近所の人達が急に無言になり、何だか様子が変です。海岸で食事をするも、周りの目線が気になるヒロイン。レイモンドはヒロインを励ましますが、以前いた街で何があったようで事情持ちのよう。食事のためレストランに入るとテレビ番組が放送されていて、それを目にしたレイモンドの様子がおかしくなります。周りの目を気にして、注文もせず店を出てアパートへ帰ることに。レイモンドの口から、二人がどういった経緯でこの街にやって来たかを聞くことになります。

  

 

エンディングは二つで、エピローグとアナザーエピローグの分岐が存在します。エピローグはハッピーエンド、アナザーは情け容赦ない激烈な内容を聞くことに。CDの帯に小さく「本作には暴力・猟奇的な表現を含んだ内容がございます。ご注意の上お聴きください」と書かれているのは、アナザーの内容について。ハピエンであるエピローグも本当のハッピーエンドとは言い難く、実際はビターエンドな気が。状況が変わっても二人の過去が変わるわけではなく、記憶を抱えて生きるのも辛そうな。運命共同体である二人の絆はとても強く、幸せになってくれと思いました。 

 

ネタバレすると面白さ半減どころではないため割愛しますが、ヒントはアメリカが舞台で銃社会であること。真相が分かった上で聞き直すとレイモンドやヒロインの内心を想像して、あのセリフはこうだったのかとなりました。明るく優しい声や何かあったと感じさせる不穏なしゃべり、激しい感情表現と黒井さん起用に納得しかないです。キャストの演技以外もかなり力が入っていて、部屋や店でかかっていた音楽、ざわつく街中の音やBGMと、シチュエーション音声であると同時に上質のボイスドラマです。

  

 

シチュエーション音声の特性を良く活かした作りで、SEやBGM以外基本情報は男性キャラクターのセリフのみ。すごく溺愛されてるのは伝わってくるけど、不審な点があまりにも多くて。家にラジオなど情報が入ってくるものをあえて置かない、ヒロインをあまり家の外に出したがらない、以前いた街で何かあったらしいこと、会話の端々に不穏さが漂っていること、街の人達の反応など。彼の言葉をどこまで信じていいのか分からず、頭が混乱しました。ヒロイン=リスナーの描かれ方ですが、リスナーはヒロインの内面や過去を知っているわけではなく、ひたすら傍観者の立場。不吉な予感はあるものの最後まで聞かないと真相が分からないため、アナザーを聞かない選択肢はないという辛辣さ。初回の衝撃はかなりのもので、良くも悪くも心に爪痕が残りました。

 

脚本の堀川ごぼこさん、エロ特化や甘々、コメディと非常に振り幅が広い方ですが、サスペンスが真骨頂であることを思い知らされます。甘いお菓子と思って食べたら、中に火薬が入っていたぐらいの衝撃作。これから聞く方は、ネタバレ踏まずに聞いていただきたいです。