偏愛シチュエーション

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Masquerade 三章終焉(CV:佐和真中)

Masquerade 三章 終焉

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HOBiGIRLS neige発公爵家のヒロインをめぐる異世界ファンタジー第三章。最終章で声は佐和さん。ヒロインの実の兄であるノエルのターンです。今巻は1,2章の解答編と言える内容で、前作までを履修してから聞くべき作品。公式に掲載されているSSにも、謎を解くヒントがいくつも散りばめられています。

HOBiGIRLS Masquerade 三章 終焉

 

ヒロインはティリア王国のアルドナート家の令嬢で、隣国ラウルス王国に嫁ぐことが決まっている女性。1,2章同様結婚祝いとして、屋敷で仮面舞踏会を開くことに。舞踏会の夜、貴族の圧政に苦しむ領民達が反乱を起こし、屋敷内に人々が乱入。秘密の部屋に逃げ込んだヒロインは血を流し床に倒れる父アルドナート公爵と、手のひらを血で染めた腹違いの弟レオの姿を目撃します。ヒロインはその場で気を失い、目を覚ますと兄のノエルと軟禁されていました。ヒロインにノエルは状況を説明、父が死亡したことを告げます。次にヒロインとノエルの幼い弟で、公爵位を継ぐ予定だったユーリもすでに殺されているという言葉が。反乱の原因は増税で、領民の不満が爆発したのだろうと言うノエル。嫡子のノエルが殺されていないのは、病弱で公爵位につけない体だから。ノエルは同席していたレオが父を殺したのだろうと言います。レオは父の子であると同時に母が妾で蔑まれており、反乱の機会を窺っていたのではというのがノエルの考え。レオの他に、ヒロインとノエルに仕える騎士クロヴィスも裏切ったと言います。警備は完璧だったはずなのに、何故領民達が館に侵入できたのか。屋敷の城門を解放し、侵入を許したのがクロヴィスだったのです。クロヴィスもレオ同様、アルドナート家に恨みがあったのでしょうか。更にレオとクロヴィスは、すでに死亡しているという言葉に驚かされます。序盤から主要人物が多く死亡しており、危機的状況です。



ティリア王国に助けを求められないのかというヒロインの問いに、ノエルは首を横に振ります。自分達二人が人質のようなものだから、手が出せないのだろうと言います。明日には自分は処刑されるだろうと言うノエル。ヒロインのことは絶対に殺させない、アルドナートの名を背負うのは僕だけでいいと言います。兄様と一緒に死にたいと言うヒロインをノエルは諫めます。僕もお前を愛している、お前を女性として愛していると告げます。血まみれ王妃の伝承もあり、近親婚は禁忌とされておりこれは重い告白。アルドナート家は近親婚を繰り返してきた家系で、血まみれ王妃を輩出したことから近親婚がタブー視されたのです。血まみれ王妃は、四百年前ティリア王家に嫁いだ絶世の美貌を誇る女性。その色香で王を傀儡とし、王室を支配した歴史があります。圧政を敷き国民を苦しめ奴隷をなぶり殺しにするなど、猟奇的な趣味を持っていたという王妃の言い伝え。以降アルドナート家の者が、王位を継ぐことはなかったというのが現状。
明日死ぬかもしれないという状況下で、愛情があるなら受け入れてほしいと言うノエル。ヒロインはノエルの愛を受け入れる決心をし、ノエルは喜びます。そのままノエルに抱かれることに。病弱な体とのことですが、愛してると何度も告げられる狂おしい濡れ場が描かれています。

 

翌日ノエルを処刑するため訪ねてきた使いの者に、舞踏会の夜公爵が飲んだワインを褒美として振るまうノエル。危機が迫っているはずが、何故か優雅に使者を諭します。馬車の用意をして、ノエルとヒロインをここから連れ出すよう使者に命令します。ノエルはヒロインに出掛けようと、まるで行楽にでも行くかのような口ぶり。二人がやって来たのは森。ここはノエルが継いだ森と言います。

昨日までは処刑されるかもと風前の灯のような命だったはずが、難なく逃れることが出来たことを不審に思うヒロイン。ノエルはヒロインのために美しい世界を作ると告げ、あの夜の真実を語り始めます。生まれついての高貴な身分と気位の高さ、聡明で冷酷なまでの理性と客観性、洞察眼を持ち合わせたノエル。おっとりと優雅に、なめらかな口調で恐怖の真実を告げます。彼の語る美しさは大抵の者が立ち入ることが出来ない領域にあり、ノエルの求める理想郷は人々の手が届かないところにあるのでした。ノエルにとっての絶対は実の妹であるヒロインのみで、世界で一番ヒロインを愛するのはノエルであることが偽りのない真実と感じました。発売前に脚本の高岡果輪さんは「ノエルは『善』そのものです」と語っておられます。彼の善は常人の理解が及ばないもので、戦慄を覚えました。別ジャンルの作品ですが「最高最善を語る最低最悪の魔王」というフレーズが浮かびました。

 

謀略と男性キャラクターとの恋と逃亡劇が、シリーズ通しての大きなテーマだと思います。他に感じたのは「事実も正義も主観的なものである」ということでした。キャラクターが語る事実は彼にとっての事実であり、何度も修正を余儀なくされます。全てを知るノエルの正義は彼特有のもので、他の人にとっての正義ではない。伝承さえ結局は人による言い伝えで、主観が伴うものであり真実ではないこと。第一章の事件の発端に始まり二章で陰謀を知り、三章で真実に辿り着く作りが見事で感銘を受けました。